サクラサクヒ
設立したばかりの芸能プロダクションからショートムービーの脚本と監督を頼まれた。
自分の映画がまだクランクアップしていないのでやる事は沢山あるのだけれど、社会的な観点から見れば現在無職。忙しくとも無職。たかが無職。されど無職。失業保険が恋しいの。
携帯小説を書いている女の子との共同脚本になるという話で企画は進み、午前中から編集の合間を縫って構想を練ったりなんかしていると、おとついヤフオクで落札したipodが届いた。
韓国製なので無職の僕にも買えてしまうお手頃価格だったのだけれど、説明書がハングルで解読不能な上にボディの裏にもハングルの刻印とか入ってるし。まぁ良いか、説明書なくても何となくわかりそうだし、チュ・ジフンとかソ・ジソブのおかげで韓流人気は未だ健在だし。
これで僕もipodユーザーだとばかりに早速お気に入りの曲を入れてみる。一番最初は何を再生してくれようかと胸を躍らせ、探り探りの操作でボタンを押していると、バロム1のテーマ曲を再生してしまった。ヘッドホンを挿した瞬間、水木一郎の叫び声がズババババァ~ン!と。
「マァ~ッハロットでブロロロロ~、ブロロロロ~、ブロロロロォ~♪」
しかも最大音量で「ぶっとばすん~だギュンギュギュ~ン♪」と罵られひっくり返った。
ここは若者らしくスタイリッシュにいこうと、マクドでポテトを買って公園に行くとあまりにも美しい桜吹雪が辺り一面に。これは良いですね!絶えず降り頻る花びらを浴びながら公園のベンチでフライドポテトとカフェオレ片手に韓国製ipodでニュー・オーダーなんかを聴いてみる。
するとどうだろう!
驚くべき事にその姿はどこからどう見てもニートそのものである。
しかも平日の真っ昼間。公園内にいるのは子供連れの主婦とか暇そうなじーさんとか陽気な外人さんぐらいのもので、その隅っこのベンチでさっきから動かずにじっとしている僕はニートと間違われていただろうに。君たち、そう云ってくれるなよ。ニートじゃなくって無職なんだ。
仮に僕が伊勢谷友介みたいに背が高くて彫りの深い顔立ちをした絵描きさんとかだったらきっとそんな風に思われることは無かっただろうし、初回特典として沢尻エリカみたいな女子大生がマンドリンを抱えて愛想良く告白しに来ただろうし。そんな風に幸せな妄想をしてみたがダメだった。無職の僕は伊勢谷友介にはなれない。無職なので伊勢の赤福餅も食えない。
ああ青春。
近寄ってきた鳩にポテトを配りながら目線を遠くに移すと、短いホウキを持ったじーさんが地面に積もった桜の花びらを手製の平べったいチリトリで集め始めるではないか。頑張るじーさん、一心不乱に花びらを集めるも、せっかく溜めたチリトリの上の花びらはさっきから風に吹かれて減ったり増えたりを繰り返すばかりで一行に溜まりゃしない。そばにいた子供も応戦し、まるでバロム1のように力を合わせて花びらを集めるも風に吹かれて減ったり増えたり。
楽しそうだ。
「僕も入れてよ!」
と、云いたいが、勇気がない。
キャアキャアと花びらを集める子供のお母さんがあまりに可愛らしいんだもん。
子供をダシにして幼な妻に近づく僕の魂胆を見透かされたら、そりゃ恥ずかしいもん。
超人超人ぼく~らの~バ~ロ~ムワン♪
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